「◎◎さんが、また部屋に来たんだよ。」と母が言った。
母よりは1,2歳若いので多分90歳前後の女性だ。彼女はよく母に胸を触らせる。「おっぱいが小さくなってしまって大変」だというのだ。だから、「大きく するために牛乳を毎日飲んでいる。」といっている。いまさら、おっぱいを大きくしてどうするのかと母が聞いたら、「二人の息子にやらないと、息子が大きく ならない。」と心配しているのだ。20~30分ほど自分の心配を母に伝えている間、施設内部では◎◎さんが何処に行ったかわからないと大騒ぎだったそう だ。彼女は私がエレベータで2Fに上がった時に大きく開いたエレベーターに向かってきたことがあった。職員はあわてて阻止する場面に遭遇したことがある。 エレベーターが外に通じる道であることは知っているのだが、一旦、外に出たら、戻ってくる能力がないのだ。無謀なことなのか、それとも夢の世界から現実の 世界に入る扉の向こうには生存できないくらいの危険がいっぱいなのが住人の大部分は知らないからなのか。

母の施設はとても環境もよく、介護を主とする従業員は若く手のかかる仕事をやっている。新興住宅地の一部で田畑の見える場所に3層の建物が一見何をしてい るのかがわからない趣で存在している。ビジネスホテルとしての立地ではないし、無味乾燥な工場というわけではない。私はこの手の建物が介護の施設であるの が、この施設のおかげで理解できるようになった。今、新潟のディサービスを中心とした施設は転用されたものが多いように思える。元は小さな食品スーパーで あったり、コンビニであったり、古いビルの1階を利用していたり、商業施設であって駐車場があったものであったり、している。
つまり、ディサービスを中心とした介護施設は多大な投資を必要とせず設立が可能な場合が多いということと、ニーズが同時に多いのだということがわかる。最 終的な業態としてもてはやされているのは100円均一小売業、そして、このディサービスの介護施設のような気持ちさえわいてくる。
その中で、本当に基礎から作ればこうなるのだと言うタイプが母の介護施設のような気がした。1Fはディーサービス、2Fはショートスティ、3Fは優良老人 ホームとなっている。


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