西○○中央病院にAM9:30に到着し、早速、胸部レントゲン撮影をおこなう。本日は3ヶ月定期検診だ。撮影は相変わらず「顎を載せて、両手の甲を裏返し て、イキを吸って」そして撮影、診察まで時間があるので、喫茶でモーニングメニュー400円をいただく。がっちりした胚芽入りの6枚切りトーストを2枚。 キャベツ、レタス、トマト、ゆで卵半分と缶詰には言っているパイナップルが一枚のサラダ。ドレッシングは3種類。それに、コーヒーだ。3ケ月毎にくるとい つも朝のメニューは変わっている。当然だ、今は秋、でも前回は7月だったので夏、メニューも変わるね。そういえばテーブルの配置も少し変わったしクロスも 変わった。それらが、秋色なってきている。この病院には生涯をこの建物で過ごす人も多いのだし、何ヶ月も病棟からでれない人も多い。だから、喫茶の心配り は大切だし、何よりも売店や喫茶、理髪店などの従業員が元気だ。一般の営業より元気だと思える。
と、ここまで打ち込んでいると売店の女性店主が やってきて話しをした。とりとめのない話なのだが、どうやら、私はこの肺ガンが中心のこの国立(現在は独立行政法人)のこの病院では珍しい患者だったらし い。本人はあまりそんなことを意識していなかったのだが昔から好奇心の塊みたいといわれたが、持ち前のその塊で肺ガンを乗り切ったようだ。手術やイン フォームドコンセントなどにおいても質問だらけの患者で手術方法、麻酔、痛み止めなどの薬、手術の道具に至るまで質問をし納得して興味津々で手術と入院生 活をおくった。でも自分の身体のことだから興味を持つのも当然でいいのではないかと個人的には思っているし、通院、検査、ガンの宣告、入院、手術、退院、 どの時点を振り返ってみても刺激的な初めての体験だった。
入院中にはこの売店と喫茶には毎日のように利用させていただいた。病院内のスタッフは総じて患者に明るく声をかけているように思える。それが一般社会よりはいくらか死という事態に近いと言うことかもしれない事なのだと自覚できる。
実 際、入院ということも私には初めての事件だったが、生まれての家庭環境のせいか、肺ガンという非常に困難な病であってもさほど恐ろしくも感じなかったし、 それも興味の対象であった。しばらく、売店の女性店主と話をして予約してあった外来にいくと先生が私をすぐによんでくれて、診察が始まった。今までも術後 経過はすこぶる良い状態だったのだが、これで、手術後11ヶ月がたち、今度の検診からは半年に一回となった。肺ガンは克服されたと思っている。
思 いの外早く診察が終わったので、病院内の理髪店で髪を短めにカットしてもらうこととした。理髪師が懐かしそうにして、注文通りにカットしてくれた。そこで 45分をついやしてから、病院周辺を一回りすることとした。私がこの病院入院中には毎日何度もこの敷地周辺を体力をつけるためと、もう一つ、この病院敷地 内に生息する野良猫を観察するために回ったものだ。
ちょっと大きな病院は周囲に自然を抱えている場合が多い。どうしても、入院生活が長期にわたる と患者の心がすさむのだろう。木々の植え込みや東屋までもある。そして、だんだん身内の訪れも少なくなってきたり、必死に病気と闘っている長期入院者に とっては餌をほしがる野良猫だって生き甲斐となってくる。だって、野良猫は患者からの食料調達が生命を維持する最も大切なファクターだから、餌をくれる患 者には大いに甘える、頭から身体を押しつけて尻尾をふる。私はこの周囲にいる20匹あまりの野良猫に名前をつけて観察した。4つのグループに分かれている 彼らの行動を1000枚にも及ぶデジカメ写真に納めて分類した。それを、私のホームページで発表した。
3ヶ月ぶりに彼らを見た。幾つかの猫が見あ たらなかった。黒猫しか生まなかった高齢の雌猫はまだ生きていた。動きが幾分遅くなっていたように思えた。背中に大きな傷を負っていたロンリーCは居な かった。もうすぐまた雪が降り長い冬がくる。また、古い命が去り、新たな命が春の到来を味わえるだろう。
肺ガン病棟は通過点である。ある者はそこで終端となり、また一時社会に復帰する者、わたしは取りあえず五年生存率を少しは上げる人間になることを心に決めている。あと、1,2ヶ月で雪がふり、冬がくる。
午前中いっぱいで病院をあとにした。